ひとつひとつ、一歩一歩
-
元農林中央金庫 大阪支店
畑中 文代(はたなか ふみよ)
(一般社団法人日本秘書協会 元理事)
先月号に続いて奈良薬師寺執事大谷徹奘師の言葉(日めくりカレンダー『日々のことば』)です。実に単純で当たり前の言葉ですが、つい忘れがちなことではないでしょうか。
全国秘書会議2015(第23回)が、ご参加者始め多くの皆さまのご協力のもと盛会裏に終了しました。今年のテーマは「進化する秘書-オフィスプロとしての革新の一歩-」でした。「さて、私は進化しているだろうか」――その掲げられた素晴らしいテーマに少々気後れしながらの参加でした。
ご参加の皆さまは、どの方も生き生きとしていらっしゃり、まさにオフィスプロばかり。開会前の華やかな雰囲気から、勢いよく進化し続けていらっしゃることが感じられ、大変眩しく思いました。更に、基調講演始めご登壇の皆さまや、グループディスカッションなどでご一緒した方々から、それぞれの「進化する秘書」についてのお話を伺うことができました。その中で私が感じたキーワードは「気付き」と「一歩」の二つでした。
秘書になって2か月という方は「何か得るものがあるのではないかと思って参加を決めた」とのことでした。秘書になった直後にお申し込みをされたのですから、素晴らしいタイミングで全国秘書会議と出会われたわけです。職場内だけでなく、外の世界で広く何かを学ばなければという「気付き」が、大きな「一歩」を踏み出させたのでしょう。
自身を振り返ると、秘書になったばかりの頃は、職場のOJTだけではいけないと思うものの、何をどうしてよいのやら分からず、気持ちばかり焦っていました。一歩も踏み出せていなかったと言えるでしょう。その後ようやく、秘書と名のつく書籍を手当たり次第に書店で購入し、秘書のためのセミナーに片っ端から参加するうち、当協会に出会えたのでした。あれから永い年月が経ち、進化とまではいかなくとも、私も少しずつ確実に歩んでいたのですね。
一方、懇親会でミニスピーチをしてくださった加藤秀子様は、戦後を駆け抜けてこられた日本のバイリンガルセクレタリーの第一人者としてご活躍なさった大先輩。しかも、当協会そしてCBSの創立に寄与された方です。今年、米寿をお迎えになったとは思えないほど大変お元気で、潔いほどの語り口で、機知に富んだ魅力的なお話には、ついつい引き込まれ、こちらまで笑顔になり元気になっていくのでした。
「果たして私が米寿を迎える頃、加藤様と同じくらいの勢いでいられるのだろうか」、そして「ぜひ、そうありたい」と誰もが感じたのではないでしょうか。
そのご経験とご功績を、簡単に私たちと比べるのは無理があるかもしれませんし「一歩」の歩幅も随分と異なることでしょう。けれども、やはり「気付き」と「一歩」の連続でいらしたでしょうし、それらの積み重ねが現在の加藤様を作り上げていることを確信しました。
もちろん、「一歩も半歩も踏み出せなかった」という経験談もありました。そんなときには「足踏みでもいいから、立ち止まらないこと」なのだそうです。戻らない、止まらない、足踏みしながら諦めずに次の一歩へ備える、このことが大切なのでしょう。
ご参加の皆さまは、業種も立場も経験も年齢もさまざまですが、新たな出会いや再びのご縁から何らかの刺激をそれぞれに持ち帰られたことでしょう。
全国秘書会議に参加経験のない方には、来年こそはぜひご参加くださいますようお待ちしております。今年参加された皆さまには、また来年もお目にかかれますように。それまで私も進化し続けたいと思っております。
ひとつひとつ、一歩一歩。