秘書のイノベーション
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株式会社チュニーズ・カンパニー代表取締役
丸山 ゆかり(まるやま ゆかり)
(一般社団法人日本秘書協会 特別顧問)
過日、大阪出張の新幹線で雑誌を手に何気なくページをめくっていたところ、「リアル秘書vs電子秘書」というタイトルの記事が目に留まった。現実の秘書を「リアル秘書」と呼んでいることにやや違和感を覚えるとともに、対抗意識を燃やしている「電子秘書」の存在に何やら不思議な気持ちにさせられた。とは言うものの、サブタイトルの「電子秘書はリアル秘書に勝てるのか!?」のフレーズには思わず興味をそそられた。すでに連載は進んでおり、今回の対決は第3ラウンドを迎えていた。
なんと「第1ラウンドのコスト対決は電子秘書の圧勝。第2ラウンドの顧客管理精度でも電子秘書が勝利した」とあり、第3ラウンドのタスクは、取引先訪問の際に事前に地図を準備したり、移動方法を知らせたりする業務についての勝負であった。さすがに「リアル秘書」としての自負がくすぐられた(このころには不覚にも「リアル秘書」の存在を認めるに至ってしまったようだ……)。
この記事はある経営コンサルティング会社が掲載したページで、これからの時代に少人数でいかに効率よく多くの仕事をこなす経営にシフトするかを提案し、人員削減のターゲットを秘書に向けているものであった。第3ラウンドの結果は、ネット検索した上でプリントアウトした紙を上司に渡すに留まるリアル秘書に対し、デジタル情報をそのまま提供することにより、どこにでも持ち運べる便利さで電子秘書の勝利となり、なんとも腑に落ちない思いのまま記事は終わった。
秘書業務の意義は、どのような状況下でも上司の仕事をサポートすることで企業の生産性を上げることだと思う。しかしながら、企業や組織そのものがイノベーションを求められる今、秘書業務も旧来のやり方を見直し、抜本的な仕組みの改善に対応することが肝要であろう。タイムリーで的確な情報提供、周到な準備と調整、そしてスピード。そのためには人的ネットワークとITツールは欠かすことはできない。秘書業務に新しい価値を生み出すためにも「秘書のイノベーション」が必要である。
前段の記事を読みながら、私はこう考えた。電子秘書と対決するのではなく、リアル秘書が電子秘書を使いこなすことで何倍もの仕事ができるはずだ。おそらく次世代の電子秘書は人工知能をも備え進化し続けることであろう。常にそれらの新しいツールや手法をキャッチアップし、自在に操るスキルを身につけておくことが秘書の付加価値に繋がるものだと思う。
後日また新幹線で、この結末が気になり雑誌のページをめくると、ちょうど最終回結果発表となっていた。この連載における秘書対決の勝負は6対1、なんと電子秘書の圧勝だという……。
さて、この結果を皆さんはどう考えますか。
出典「株式会社NIコンサルティング秘書対決(9)」